ホームのベンチに腰を降ろして座って対面のホームを眺めていた。
ふらふらと、女性がホームの端へ歩いてゆく。
次の瞬間、
大きな電車のブレーキ音に加えて悲鳴と驚嘆の声が挙がった。
『キャー!!』『飛び込んだわ…』『女性らしいぞ!!』『自殺だ…!!』『緊急連絡!!緊急連絡!!』『若い女性らしき人が負傷、救護願います』『うわー俺、見ちゃった』『何ナニ?!死んでるの?』『うわ、最悪。』『血が吹き出してるぞ!!』
『早く!!』『救急車ーぁ!!』『停止、電車停止ー!!』『飛び込み?』『うわ、何あれ…キモッ』『電車遅れるじゃん?』『もう死んでる』
辺りは、一瞬にして惨劇へと変わっていた。どうやら向こう側、対面のホームに入ってきた特急の通過電車に女性が飛び込んだらしい。
辺りのホームには血が溢れていた。線路内には人間一人分の血液がほとんど出てしまっていた。女性は電車の車体に体を巻き込まれ苦しさでか、死を目の前にしてか、大きな唸り声を挙げていた。
『ウッ…ウ〜ウゥ〜ウゥ…!!』
ホームにその小さな絶望した擦れた声が響く。
隣にいた女性が唇を震わせて「そんな声、聞きたくない!!」と身を震わせて耳をふさいだ。そんな声も少し経つと聞こえなくなった。
もう半分死んでるのかも知れない。女性の体は引き裂かれ、目を見開いたままである。その眼には、何を見つめていたのであろう。世の中の絶望であろうか。
じっと、飛び込んだ瞬間から作業の終わる間、対面ホームをベンチに座りながら眺めていた。すぐさま、手際良く青いビニールシートがかけられ覆われる。しかし、女性の体の一部はあちこちに散乱している。
まさに惨劇である。
しかし、一時間も経つとそんな混乱も落ち着きを取り戻した。また、いつもの駅のホームの景色が流れる。アナウンスでは一言『人身事故の為、ダイヤが乱れております』とだけ放送された。
血が吹き出して溢れていた線路内には水が撒かれ、またいつもの日常の風景が「造られて」いた。
翌日の新聞には小さい文字で一文「新宿行き特急電車に女性飛び込み、通勤客らの足に5万人へ影響。」とだけ書かれていた。
あの女性は何を見て、何を思って死んでいく事を選んだのであろう?そんな考えこそ、甚だ検討違いなのではあるが。
今日もまた、僕は造られた日常の景色の中で生活をしている。
みなみ



























